相続・遺言の弁護士 茨城県水戸市の中城法律事務所

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目次

そもそも相続とは何か?

法律上、相続は、被相続人の死亡によって開始する、とされており、被相続人が死亡した時点で、被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続人に受け継がれることになります。

簡単に言えば、相続は、人が亡くなった場合、亡くなった人の財産を相続人に受け継ぐ法律関係ないし法律上の現象のことです。

ここでは、これをふまえて、いくつかの問題点を取り上げます。

まず、人が亡くならないと相続は開始しませんので、戦前の家督相続のように生前に相続が開始することはありません。そして、ここにいう死亡とは、病死や自殺だけでなく、失踪宣告や認定死亡といった法的に死亡と扱われる場合も含みます。

また、亡くなった人(被相続人)の財産を受け継ぐ人(相続人)は、法律上その範囲と順位が決められていて、被相続人の遺言によっても相続人自体を指定し変更することはできません(相続人の欠格・廃除の制度は相続欠格・相続廃除とはをご覧ください)。

そして、相続は、包括的に財産を受け継ぐ制度ですから、権利だけでなく、義務もまた受け継がれる点に注意が必要です。そのため、借金のような義務の方が、権利(プラスの財産)より多い場合に備え、民法は、相続放棄の制度を用意しています。

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相続人とは

相続人とは、亡くなった人(被相続人)の財産(遺産)を包括的に受け継ぐことができる一般的な資格を持った人のことです。配偶者血族相続人に分けられます。配偶者とは妻や夫のことで、血族相続人とは、子、親等直系尊属、兄弟姉妹のことです。配偶者は常に相続人となり、それ以外の血族相続人はそれぞれ、子(第1順位)、直系尊属(第2順位)、兄弟姉妹(第3順位)の順位で相続し、配偶者と共に相続する場合の相続分の割合も法で定められています。

配偶者
妻 または 夫 ・・・ 常に相続人
血族相続人
子      ・・・ 相続順位 第1位
親等直系尊属 ・・・ 相続順位 第2位
兄弟姉妹   ・・・ 相続順位 第3位

以上のとおり、民法では、相続人の範囲や順位を画一的に定めています。これを遺言やその他の方法で相続人を指定し順位を変更することはできません。

もっとも、一般的な資格ですから、個別の具体的な相続事件について、誰が相続人になるのかは別に考えなければなりません。民法上、相続人の相続資格を奪う制度(相続欠格・相続廃除)や、相続人が自らの意思で相続人の地位を辞する制度(相続放棄)が採用されているからです。

また、相続は、被相続人の財産を相続人に受け継ぐ制度ですから、被相続人が亡くなった時に相続人が生きていなければなりません(同時存在の原則)。

これに対する例外として、胎児が出生したものと扱われる胎児の出生擬制と、代襲相続の制度があります。後者は、相続人である子が、被相続人が亡くなる以前に死亡していても、その子(被相続人にとって孫)が代わって相続するという制度です(兄弟姉妹が相続人で被相続人より以前に死亡している場合にも、その子(被相続人にとって甥・姪)に代襲相続がなされます)。

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相続欠格・相続廃除とは

法定相続人が相続権を失う場合があります。

相続権がはく奪される制度として、民法上、相続欠格相続廃除があります。なお、相続人自身が相続資格を辞するのは相続放棄です。相続放棄はあくまで、相続人の主体的意思でする放棄であって、資格をはく奪されるのとは区別されます。

相続欠格は、公益的観点から相続資格をはく奪する制度で、民法891条により、その要件が決まっています。法律上の要件にあてはまると相続する資格を当然に失うという制度ですから、公益上重大な事実が相続人の側にあった場合です。例えば、相続人が被相続人を殺害したような場合です。

相続廃除は、相続欠格ほど著しい相続制度への侵害行為があったわけではないものの、被相続人(亡くなった人)が法定相続人への相続を望んでいない場合に、被相続人の意思に基づいて、その者から相続権を奪うことができる制度です。相続廃除では、被相続人が生前にまたは遺言により、特定の者による相続を廃除する意思を表明し、それを家庭裁判所が審判で認めないと、相続権は奪われません。被相続人の意思の表明と家庭裁判所の審判が必要になる点で、相続欠格とは異なります。相続廃除にあたるのは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱といった著しい非行がある場合です。

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代襲相続とは

例えば、被相続人が死亡し、相続人として一人っ子である息子がいた場合に(子は第1順位の相続人)、その息子が被相続人の死亡より前に死亡していた時、どうなるのでしょうか。第2順位の直系尊属や第3順位の兄弟姉妹に相続がされるのでしょうか。

民法は、このような場合に、死亡した息子に子がいれば、その子が死亡した上記息子(その子にとって父親)に代わって被相続人(その子にとって祖父母)を相続するという代襲相続の制度を採用しています(民法887条2項)。したがって、この場合に第2順位以下の法定相続人には相続権はありません。

また、第3順位の兄弟姉妹にも代襲相続の制度が適用されます。したがって、被相続人が死亡し、法定相続人が兄弟姉妹である場合(第1,2順位の相続人がいない場合)に、その兄弟姉妹が被相続人の死亡より前に死亡している時、兄弟姉妹の子(被相続人にとって甥や姪)が代わって、代襲相続をすることになります。

なお、法定相続人に相続欠格事由があって相続資格をはく奪される場合や、相続廃除により、被相続人の意思により法定相続人の相続資格をはく奪される場合にも、法定相続人の子は、代襲相続により相続をすることができます。ただし、法定相続人が、相続放棄をした場合には、その相続人ははじめから相続人ではなかった扱いになるので、その子は代襲相続をすることができません。

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相続放棄とは

相続放棄は、相続人が相続の効力を消滅させる意思表示のことで、家庭裁判所で申述という手続を行い、家庭裁判所により受理の審判が行われます。相続放棄を証明するには家庭裁判所による相続放棄申述受理証明書を使います。

相続放棄をした人は、はじめから相続人ではなかったものとみなされますので、放棄した人の子は代襲相続することができなくなります。

相続の放棄ができる期間を熟慮期間と呼び、自分のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に相続放棄をしなければなりません(もっとも、利害関係人の請求により、家庭裁判所が認めれば期間を延ばすこともできます。)。

例えば、被相続人の遺産の中身が、プラスの財産として預貯金100万円、マイナスの財産として借金800万円がある場合、相続放棄さえすれば、一切の相続財産を承継しないこととなり、預貯金100万円も承継できませんが、借金800万円を返済する必要もなくなります。

しかし、相続人が相続を承認して(この場合すべての遺産が受け継がれ、預貯金を受け継ぐだけでなく、借金全額を受け継ぎ返済をします)、債務(借金)を返済していくのを希望すれば放棄とは別の扱いになります。

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相続財産について

相続によって、相続人に受け継がれる権利義務一切のことを「相続財産」といいます。一般には、「遺産」と呼ばれていますが、同じことです。

相続は、一切の権利義務を受け継ぐ制度ですので、プラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産(負債)もそこに含まれます。マイナスが多い場合に備え、民法は相続放棄の制度を採用しています。(相続放棄とはをご覧ください)

ところで、ここにいう相続財産である一切の権利義務には例外があります。

ひとつは、亡くなった人(被相続人)の一身に専属していた権利義務です。

一身に専属する権利義務とは、特定の人だけ有することができ、承継することのできない権利義務のことです。例えば、労働契約上の労働者の権利や義務があります。

もう一つは、財産です。

祭祀財産とは、お墓や仏壇、家系図などのことで、祭祀に要するものをいいます。祭祀財産は、相続人ではなく、祭祀を主宰すべき者に受け継がれます(民法897条1項)。祭祀財産は相続とは違ったルールで受け継ぐ人が決まります。

この他にも、死亡保険金や死亡退職金について、相続財産に含まれるかどうか問題になりますが、これについては、別に改めて説明します。

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死亡保険金・死亡退職金は相続財産か?

相続財産との関係でよく問題となるのが死亡保険金死亡退職金の扱いです。

例えば、保険契約上受取人として、特定の相続人「A」が指定されていたり、あるいは、特定せずに「相続人」と指定されている場合に、相続が発生したとき、どのように扱われるべきでしょうか。

判例は、死亡保険金請求権は、保険契約によって生じる受取人固有の権利であるから相続の対象ではないとしています。つまり、死亡保険金は相続財産ではないとしています。なぜなら、相続は、被相続人の財産を受け継ぐ制度ですが、生命保険金は、受取人が保険会社から直接受け取る権利(お金)ですから、被相続人から受け継ぐわけではないという点で、相続の対象ではないということになるわけです。

同じように、死亡退職金も、法令や就業規則で死亡退職金が遺族に支払われることになっていますので、相続の対象にはならず、遺族が直接就業先に請求する権利という意味で相続財産ではないのです。

もっとも、税法上は、死亡保険金も死亡退職金もみなし相続財産として扱われます。一定の非課税枠があるものの、相続税がかかる場合があります。

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